研究インタビュー

Interview about research

※所属、職名はインタビュー当時のものです。

岐阜大学工学部 精密機械加工 金属積層造形 助教

古木 辰也Tatsuya FURUKI

要求精度の高い航空宇宙産業

要求精度の高い航空宇宙産業

私は「機械加工」を専門とした研究をしています。
中でも、航空宇宙産業界の機械加工は他の産業に比べて、とても要求精度の高い加工が求められる産業の一つとされています。

航空機の生産では、加工する素材の大きさも大きく、加工する部品の種類自体も多いのですが、ここに航空機をつくる上で最も重要な“軽さ”という要素が入ってきます。

この“軽さ”が航空機の要求精度を高くしている大きな要因です。
“軽い=薄く”しなければならないからです。

素材の厚さが2〜3㎜というとても薄い領域内で、アルミやCFRPの板を“正確”かつ大量に加工しなければならず、一般的に、直径が5㎜の穴に対して誤差で許される寸法は、僅か数十ミクロン程度と大変シビアな世界です。

例えば、加工を行う際に発生する“削る”という作業には、“力”が必要ですが、この削る力が大きすぎると、素材自体がたわんだり、歪んだりしてしまい、その結果、正確な位置での真っすぐな穴が開けられなくなってしまいます。
そうすると、リベットなどで取り付けた際に、きちんと取り付けられずに外れてしまい、大きな事故を引き起こしてしまう原因になってしまいます。

このような事から、航空宇宙産業界では高度で正確な加工が求められているのです。
その為には、“最適化された最小限の力”で加工する事が重要となります。

この“最適化された最小限の力”を機械工学の観点から探るのが、私の主な研究テーマです。

素材と工具の最適化された力のバランスを探る

“最適化された最小限の力”を探る上で、「加工工具」の耐久精度や性能を正しく把握する事が大変重要となってきます。

加工工具の種類によって、工具の回転数・工具を動かすスピード・一回に削りだせる量なども違ってくる為、それぞれのバロメーターを考慮し、それぞれがどのくらい影響し合うのかを評価します。その中でベストな組み合わせを見つけ最適化する事で、素材に対してのバランスを探らなくてはならないからです。

もちろん全てを、手当たり次第当てもなく一から探る、という様な昔ながらのやり方ではありません。
統計的な手法を使って、実験条件を割り振っています。

しかしながら、その実験条件の条件設定は、人間が設定しなければいけません。

この条件決定には、今までの経験値による“人間が持つノウハウ”の部分がデータの選定に大きく影響しています。

これは、現代の技術で数値化するには非常に難しく、私自身もその時々の状況に合わせた自分の判断の最終決定を数値的に説明は出来ません。

この部分をAIなどの機械により数値化出来るようになれば、研究速度や正確性は格段に飛躍するでしょう。

実際に、航空宇宙生産技術開発センターでは、人間によるこのような経験値やノウハウによる判断基準の数値化を目指している為、その分野の専門の先生方が日々実現に向けて奮闘されています。

近い将来、自分自身の判断基準を数値によって見える化される日がくるかもしれません。
その時が非常に楽しみです。

企業と連携し現場に即した研究とリカレント教育

私の研究テーマのおよそ約半分は企業様からの依頼によるものです。
共同研究により、実際の社会に素早く役立つ研究を目指しています。

その研究内容は様々ですが、私の研究が「機械加工」を専門としている為、主な依頼内容は大方、加工の依頼を軸とした、工具や機械などの“力の最適化”を研究し改良開発するものが殆どです。

その際、企業様側から「これを加工してほしい」と加工する事が困難だと思われる素材がおりてくるので、その素材を加工する上での“最適化された最小限の力”を探り、
その力になるように、工具や機械によるバローメーターごとの条件設定をしてきます。

この一連の作業が、実際の企業様に求められている私の研究開発です。

また、以前岐阜大学が行っているリカレント教育の一貫として、企業様に出向き、講義をしたりしてきました。
航空宇宙生産技術開発センターでも、この経験を活かして積極的に参加していこうと考えています。

そして、あと半分の私の研究テーマは、企業様の依頼とは全く関係のない“学術的な研究”をテーマに取り組んでいます。

この学術的な研究の土台があってこその、実際の社会への研究成果の応用だと考えていますので、意図的に研究依頼を整備して、半分は学術的な研究にあてているのです。

研究テーマのバランスを考えながら、実際の社会に貢献出来る研究を進めています。

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