〜航空宇宙産業界に熱望される人材の育成を〜
名古屋大学と岐阜大学が連携した東海大学機構の教育プログラム
航空宇宙産業界では、設計から生産というものづくりの中で、“生産者側の心を知る設計技術者”と“設計者側の心を知った生産技術者”という、 互いの視点を知る技術者が熱望されています。
そこで、東海大学機構では、名古屋大学と岐阜大学がタッグを組み、航空産業界との協力体制を敷いて、この熱望されている“生産技術者型人材”と“設計技術者型人材”という2種類の人材を育成する取り組みを行っています。
名古屋大学では「設計システムアーキテクトコース」、岐阜大学では「生産システムアーキテクトコース」という各大学の強みを活かしたプログラムを用意しており、2つの大学でそれぞれの教員がお互いに協力体制を築いています。
その為、お互いの大学の学生が単位互換科目や共同開講科目を通じて、双方の授業を受ける事が出来ます。
名古屋大学側での設計者育成と、岐阜大学側での生産者育成の2つのカリキュラムを連携する事で、航空産業界から熱望される“生産技術者型人材”と“設計技術者型人材”を育てているのです。
名古屋大学と岐阜大学が連携した東海大学機構の教育プログラム
このコースは、内閣府の交付金および岐阜県の補助金を活用し、「航空宇宙生産技術システムアーキテクト人材育成プログラム」として開講する、岐阜大学工学部の3年生・4年生および、岐阜大学大学院の2年間を合わせた計4年間の教育プログラムです。
生産技術者として必要な知識を学ぶ座学と、設計・生産・評価するといった一連のプロセスを、航空機を題材に実体験出来る、豊富な実習から構成されています。
3年生は先ず、航空機や宇宙機の歴史やその作り方について概観する「航空宇宙生産技術概論」という科目を学びます。 この科目で航空機づくりに興味を持っていただいてから、その後、品質・経営・生産管理という3つの分野について学んでいただきます。
また、近隣の航空産業界の企業を訪問して“その企業が直面している課題について実際の現場で学生が解決する”といった学外研修科目も用意しています。
4年生では、航空機(主にドローンや自律滑空機)を題材にして、ものづくりの一連のプロセスである“設計して作って、実際に飛ばして評価する”というプロセスを学ぶ実習があり、大学院では座学として、航空機で用いられる各種アクチュエーターについて学ぶ講義があります。特別講義として、実際の航空機産業界の現場の技術者の方や、その道のトップレベルの方々にお越しいただいて、リアルな現場の生の声を聞く事が出来ます。
また、生産技術に関する演習実習としては、生産シミュレーターというものを用いて生産管理も学んでいただきます。
生産者と設計者の両視点を備えた技術者を育てる
日本で唯一の実習プログラム
岐阜大学の生産アーキテクトコースの中で最も特長的な実習プログラムは、日本で唯一、もしくは、世界で唯一といっても過言でないプログラム内容となっています。この実習では、航空機に関する専門知識が必要になるので、名古屋大学と岐阜大学が密な連携を敷き、お互いの大学の学生が一緒に学んでいます。
具体的には、クアッドコプターと自律滑空機の設計製作実習を行っているのですが、クアッドコプターの方は市販のキッドを使って最終的に自律飛行でライントレースをするといった競技を行います。その為に必要なパーツ類は基本的にはキットを使いますが、それ以外は学生達がチームプレイで自ら設計して3Dプリンターで製作し、組み立ててつくってもらいます。
自律滑空機の方は、いくつかの翼型から飛行機の翼の選んでもらって、実際に学生に設計をしてもらい、様々なセンターにある加工機を使って作ってもらいます。しかも、ただ飛ばすだけではなく、センサーも入れて翼の舵面も動く様にして“出来るだけ長くまっ直ぐに飛ぶ”といった事を目指してつくらせています。
何もないところから、設計してつくってそれを実際に飛ばしてみるということが学べる実習というのは、今までの大学では、なかなか出来なかった事ですので、学生からの評価も高く、有意義な実習となっています。自分でつくりあげたドローンを実際に飛ばしたとか、実際の滑空機を飛ばしてきちんと飛んだぞという達成感は、やってみて初めて実感出来るものです。
小型の航空機の設計から生産、そして実際に飛行機を飛ばしてデータを基に評価するといった過程を一貫して実体験出来、設計者は生産を意識した設計を、生産者は自動で組み立てる事が出来るラインを一から設計してもらいます。この実習プログラムが、“生産者側の心を知る設計技術者”と“設計者側の心を知った生産技術者”という、互いの視点を知る技術者を育てているのです。
他では出来ないこのような貴重な体験が、大学を出た際に大きな自信に繋がるでしょう。