砂田教授・稲守准教授インタビュー

~設計・生産・評価を通して
総合的な視点と技術を持つ人材の教育~

最初から最後まで自分で作り上げる事で学ぶ
設計者視点と生産技術者視点

このセンターでの学びの1番のポイントは、航空機の製造における全ての過程を「設計・生産・評価」という3本柱で体系的に学ぶ事が出来るというところです。授業で学ぶだけではなく、学んだ事項の理解を深めるための実習も含まれており、全国の大学でも大変珍しい取り組みを行なっています。
企業の工場見学に参加させて頂くと、生産技術の重要性を感じます。生産技術を理解した技術者が求められており、設計の視点と生産の視点の両方を持つ人材を育てるという事がとても重要になってきていると感じています。

このセンターにおいて「設計」に関する講義に「生産」の要素を取り入れた事により、学生の頭に“製造までを考えた設計”という意識が芽生えつつあります。前期の「設計」の講義では、飛行制御器を用いた実習も取り込みました。「生産」の講義は岐阜大学の先生方が中心に進めておられますが、実践的な内容で大変充実した内容となっています。「評価」の講義では、開発段階の飛行試験に携わっている技術者、長年飛行試験に携わっていたパイロット、研究段階の飛行試験に携わってきた研究者による、3つの視点での飛行試験の講義を行っています。様々な視点での航空機の評価について学ぶ事が出来るという点も、他の大学の講義では見られない特色です。「評価」の講義では、自分のアイデアに基き製作した小型飛行機を実際に飛ばして評価する実習も行われます。私も他の先生の講義に出来る限り参加していますが、毎週の講義が楽しみになっています。

新しい発見は意外なところから
自分の常識に囚われない広い視野を育むセンターという学びの場

日本ではその民族性からか、縦社会の中で近い考え方を持つ人の集りの中で生きて行く傾向がある気がします。大学でも、近い分野の研究者同士の繋がりは育まれるのですが、他分野の研究者など、自分と離れた研究を行う方とは交流が少ないのが現状です。
人々の常識は時代の流れと共に変わっていきます。航空機の世界も例外ではありません。かつて常識だった事、非常識だった事が、今真逆になっている事も少なくないのではないでしょうか。常に新しい情報を吸収し、新しい可能性に挑戦し続けることが重要だと思います。

東海国立大学機構に置かれた新しいセンターでは、航空機・宇宙機の設計、生産、航空宇宙の周辺技術と幅広い領域の方が顔を合わせることができます。自分の知らない技術、知らない価値観に触れるチャンスが増大します。自分と他者の技術、価値観を組み合わせることで、新しい技術、価値観が期待できると思います。研究に行き詰まった時、問題解決の突破口を開いてくれるものは、異なった分野の身近な人の技術、価値観かもしれません。このセンターを通じて多くの事を学びながら多くの人と出会い、自分の知識や人脈をより深く、より豊かなものにしたいと思っています。

稲守先生はこんな研究を行っています

私は人工衛星の軌道や姿勢の力学を基礎として新たな宇宙システムを提案することを目指して研究しています。
近年、技術の発達により小型の衛星であっても高度なミッションを達成できるようになってきています。衛星の小型化にともない、衛星が磁場などの運動を乱す外乱による力を受けて動きやすくなりますので、 抑制する必要があります。

そこで私達は、宇宙環境の力を従来のように外乱として抑えるのではなく、使ってみたらどうなるだろうという視点で研究を進めています。

例えば、私達が研究開発中の30cm×10cm×10cmの小型衛星(CubeSat)では、軌道制御用のアクチュエータを搭載せず宇宙環境の力を用いた編隊飛行の宇宙実証を目指しています。大きなアクチュエータを搭載しないため、従来の手法と組み合わせれば衛星の可能性がより広がりそうです。

宇宙工学における教育の難しさは宇宙で試す機会が極端に少ないことですが、私達は失敗したとしても回収できる模擬人工衛星を開発して、高度3km~4kmまで小型ロケットで打ち上げる実験を毎年実施しています。失敗して反省することの積み重ねの教育効果は高く宇宙工学でこのような機会はとても大切と感じます。自分達のアイデアを詰め込んだ衛星の宇宙実証を何とか成功させたいと考えています。

 

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