
〜航空宇宙産業界に熱望される人材の育成を〜
名古屋大学と岐阜大学が連携した東海大学機構の教育プログラム

航空宇宙産業界では、設計から生産に至るものづくりの中で、“生産側の心を知る設計技術者”と“設計側の心を知る生産技術者”のように、互いの視点を理解できる技術者が強く求められています。
そこで、東海国立大学機構では、名古屋大学と岐阜大学が航空産業界と連携し、「航空宇宙設計・生産融合人材育成プログラム」を進めています。このプログラムでは、“設計技術者型人材”と“生産技術者型人材”の育成に取り組んでいます。
名古屋大学では「設計アーキテクトコース」、岐阜大学では「生産システムアーキテクトコース」を用意し、それぞれの大学の強みを活かしながら、教員同士が連携して教育を行っています。そのため、学生は単位互換科目や共同開講科目を通じて、両大学の授業を受けることができます。
名古屋大学側の設計技術者育成と、岐阜大学側の生産技術者育成を連携させることで、航空産業界が求める人材を育てているのです。2020年4月の東海国立大学機構発足以来、両大学合わせて延べ6,000名以上の学生が関連科目を受講してきています。
岐阜大学での生産システムアーキテクトコース
このコースは、「航空宇宙生産技術システムアーキテクト人材育成プログラム」として開講する、岐阜大学工学部の3年生・4年生の2年間のプログラムと、岐阜大学大学院のプログラムから構成されています。
生産技術者として必要な知識を学ぶ座学と、設計・生産・評価といったものづくりの一連のプロセスを航空機を題材に実体験できる豊富な実習から構成されています。
生産システムアーキテクトコースでは、学部と大学院を合わせて150名以上のコース修了生(全プログラム科目の単位取得者)を送り出してきました。多くの学生が、航空機づくりを題材にしながら、製造業を支える生産技術の大切さを実感してくれたことは、非常に大きな成果だと思っています。
学生たちは、設計されたものをただ形にするだけではなくて、品質や安全性を保ちながら、どうすれば効率よく、安定して生産できるのかという視点を身に付けていきます。生産技術というのは、航空機産業をはじめとする製造業の現場で、ものづくりの競争力を左右する非常に重要な仕事なんだということを、実習と座学の両面から学んでいただいています。

特に岐阜大学では、品質、コスト、納期、いわゆるQCDを全体として最適化していく力を大事にしています。大学の教員だけでなく、産業界や研究機関で実際に経験を積まれた方にも講師として加わっていただいて、現場で必要になる考え方を学生に伝えていただいています。
また、岐阜県内の製造業を訪問して“その企業が直面している課題について実際の現場で学生が解決する”といった学外研修科目も用意しています。
その結果として、航空機産業をはじめとする製造業で、生産技術職を自ら志望して社会に出ていく学生も出てきました。授業で学んだ知識や実習で得た経験が、学生自身の進路選択につながっているという点は、この教育プログラムの大きな実績だと考えています。
令和9年度の受講生からは、これまでに得られた教育成果を踏まえて、カリキュラムを一新します。最新の技術動向も取り入れながら、設計・製作・評価を一体で学ぶ授業をさらに発展させ、生産技術の重要性をより深く理解し、社会に出て製造業を支える力を持った人材を育てていきたいと考えています。
生産技術者と設計技術者の両視点を備えた技術者を育てる実習プログラム

岐阜大学の生産システムアーキテクトコースの中で特長的なのは、航空機を題材にした実習プログラムです。航空機に関する専門知識が必要になるため、名古屋大学と岐阜大学が密に連携し、それぞれの環境を活かして学生が学んでいます。岐阜大学の学生は名古屋大学の飛行施設で実習し、名古屋大学の学生はメタバース空間に構築した航空宇宙生産技術開発センターの実習設備を使って実習を行うなど、物理的な実習環境と仮想空間を組み合わせながら、両大学が一体となって人材を育てているんです。
例えば学部4年生の授業では、これまで自律滑空機の設計製作実習に取り組み、学生がチームで設計し、加工機や3Dプリンターを用いて製作し、実際に飛ばして評価するという経験を積んできました。さらに、両大学の授業で選ばれた優秀機体を集めて行う東海クライマックスシリーズでは、両大学の対抗戦を通じて互いの違いに気づき、異なる視点の獲得や理解の深化につなげています。
新しいカリキュラムでは、この自律滑空機の設計製作授業が、モデルベースデザインの要素を取り入れた授業へと発展していきます。学生には、設計とシミュレーション評価のフィードバックを回しながら機体を検討してもらい、その後に実機を製作して実機評価を行うことで、設計段階の検討と実際のものづくりを往復しながら学んでもらいます。
大学院では、模型飛行機の自動組み立て装置を対象に、工程管理や工程改善について学んでいただきます。原価やコストといった経営寄りの知識も扱い、設備投資とリターンまでの費用対効果についても演習を通じて理解を深めます。
さらに、こうした教育は学生だけで閉じているわけではなく、社会人向けのリカレント講座である「PAL育成講座」ともつながっています。社会人の方と大学院生が一緒に学び、混成チームで実習に取り組むことで、学生は企業の現場感覚に触れることができますし、社会人にとっても大学で体系的に学び直す機会になっていると思います。
実際の製造業の現場に近い視点で課題に取り組むことで、学生は生産技術の重要性をより具体的に理解していきます。こうした経験が、学生にとって将来の進路を具体的に考えるきっかけになっていることは、大きな手応えになっています。
他ではなかなかできないこのような貴重な体験が、卒業後の大きな自信につながるでしょう。
