研究インタビュー

Interview about research

※所属、職名はインタビュー当時のものです。

NEW

岐阜大学工学部 機械工学科 知能機械コース 助教

八田 禎之Yoshiyuki HATTA

多関節ロボットの性能を引き出す二自由度モータで、ロボットの小型化、軽量化を目指す

多関節ロボットでは機械部品の摩擦が課題になる

私は元々、ロボット制御を専門にしていました。今は、多関節ロボットで生産現場を助けるため、小型で出力が高いモータの研究を進めています。
現在、多関節ロボットに使われている一般的な回転モータは、重さに対して出力が小さいのが課題です。そのため、ギアなどを噛ませ、出力を調整しなければ使うことができません。ギアなどの機械部品が増えれば、それだけロボットが大きくなり、重量も増します。また、ギアなどの機械部品によって動力を伝達すると、それぞれの接触部位で摩擦が発生するのも問題です。摩擦がある条件下での制御は、そうでない場合に比べて難しく、結果として制御性能の低下を招くからです。
つまり、多関節ロボットの性能を十分に引き出すためには、小型で、ギアなどを必要としない、出力の高いモータが必要になるのです。

磁気ネジを使用した二自由度モータで軽量化と小型化に成功

私は、多関節ロボットに適したモータのとして今までにない二自由度モータの開発をはじめました。従来の二自由度モータの多くは、出力が小さいことがデメリットでした。そこで私は、ボールねじを磁石によって再現した磁気ネジをモータ内部に内蔵させ、大きな直動の推力を得られる二自由度モータを開発しました。
ボールネジではなく磁気ネジを選んだ理由は、磁気ネジはボールネジと異なり、摩擦が少ないためです。そのため大きな推力を得やすいのが利点です。とはいえ回転モータと磁気ネジをそのまま組み合わせると、モータが大きくなり、部品数も多くなってしまいます。そこで私の研究では、磁気ネジと回転子に工夫を行い、部品の数を大幅に減らし、軽量化と小型化に成功しています。

磁気ネジだから可能になる特別な構造が、部品点数削減につながる

私の研究する二自由度モータでは、2種類の磁気ネジを使用しました。さらにこの磁気ネジに対し、固定子が左右に2個、それに伴い回転子も2個ある構造になっています。2個の回転子のうち片方が右ねじ、もう片方が左ねじになっており、右ねじと左ねじの力のバランスを制御することで、直動の力と回転の力を取り出せるようにしました。これにより直動の動きを制限する部品の数も減らすことができています。
この構造を実現するためには、シャフトにも工夫が必要でした。このモータでは、シャフトにも右ねじと左ねじを再現するように磁石が配置されています。一つのシャフトに、同時に右ねじと左ねじを切るような構造は、物理的なボールねじではできません。しかし、磁気ネジを使うことで、これが可能になるのも磁気ネジを使用するメリットの一つです。
これらの工夫により、従来の二自由度モータに比べ部品数を減らし、小型化させることに成功しました。

ドリル穴開けロボットから一般向け、家庭向けロボットへ

二自由度モータの実用化に向けた研究として、現在は多関節ロボットの先端にドリルツールを取り付けた穴開けロボットの研究を進めています。
従来の穴開けロボットのドリルツールには、リニアモータの上に回転モータがついていました。回転モータでドリルを回し、リニアモータによってドリルを前後させる仕組みです。しかしリニアモータと回転モータの軸が並行であるが一致していないため、ドリルで穴を開ける際にねじれの力が発生してしまいます。すると荷重に応じてリニアモータのレールが歪み、直動方向に対しての摩擦が増加します。摩擦が増えれば、モータの出力も下がりますし、制御も難しくなってしまうのです。

一方、二自由度モータは、直動方向と回転方向の軸が一つにまとめられています。そのため穴開けの際に反力を受けても軸が歪むことがありません。元々、モータとしての摩擦力が低いのに加え、歪みによる摩擦の増加も発生しないため、損失が少なくなり、モータから大きな力を取り出せるようになります。さらに摩擦が少ないことで制御も行いやすくなるため、従来では難しかった、人の動きにも近い、細かな制御も可能になるのです。
このような研究により、ロボットの小型化、軽量化が進めば、将来的には一般向けや家庭向けのロボットも作れると考えています。

その他インタビュー

More interview

お問い合わせ

Contact us

航空宇宙生産技術開発センターへのお問い合わせは、
電話またはメールにて承っております。